【高知県立坂本龍馬記念館】(1991)


桂浜を望む小さな山の上に、高知県立坂本龍馬記念館が空へと突き出すように建っている。
ここの眺望は素晴らしい。両端が途切れずに続く水平線、海岸線に引き寄せる白波と周囲を覆う木々の緑が視界いっぱいに我々を楽しませてくれるからだ。





空に向かって突き出した鉄骨とガラスの直方体の塊は、さもすれば人工物が等しく備え持つ破壊的で暴力的な面を巧く制御した上で、もうひとつの側面、人の手によって作られたという圧倒感と優越感を、それを見る我々に与えてくれている。
しかし宿命的に自然と対立することを余儀なくされている建築、人工物にとって、同時にそれは後ろめたさをも我々にもたらしてしまうこともまた否めない。
そこで注目すべきポイントが、この建築に使用されている「色」ではないだろうか。
そもそもの企画の是非は問わないことにするとしても、評価上、山の上という自然のど真ん中という敷地に対してどのように一体的調和を試みたかは重要な指針となる。
結論から言って、決して調和のとれた優れた建築であるとは言い難い。だが、使用されている「色」については見るべき点があるように思われる。



この建築で使用されている色は大きく分けて、赤、青、白の三つだ。それも自然と一見相容れない人工的な、原色が用いられている。
ここまで言うと、多分懸命な読者は、ああそういう逆説的な解決ですか。と呟くかもしれないが、いや、その通りでぐうの音もでないのだが、どうか最後まで言わせてもらいたい。
この意見は、逆説ではない。
(と最近思ってきたことを言いたい。)
全面ガラスに写る青い空の色は、確かに周囲に溶け込んでいると見ることもできる。しかし、ガラスはガラス、それだけで調和というには限界がある。そこで赤が生きてくる。料理でも、甘みを最大限引き出すためにひと摘みの塩を加えるではないか。市販のカレーのルーの味気ない薄っぺらな辛みに玉葱の甘みでコクを出すように、ここでの人工的な赤は、ガラスが持つ自然との不調和な素材感を消し去り、空と見事に同調させることに一役買っている。同時にその赤は視覚的なアクセントとなって、実際よりも建築がコンパクトに見えるのである。
ひとつの建築と周囲の自然との関係に話を移そう。
もちろん、だからといって赤や青といった色が、この周囲の環境に適しているとは言えない。この場合、無いのが一番いい、という意見に目を瞑ったとしても人工的な色味を推奨する理屈はない。だが、だからといって、緑や黄色や紫や黒が適しているいうことはできないのである。
鉄骨よりも木材であることが、木々を切り倒して建築していい理由にはならないし、それで調和がとれていると信じる理由もないだろう。



つまり、人工物と自然の関係は、エスプレッソコーヒーとコーヒーカップに付いてくるチョコレートみたいなものとは思えないだろうか。ホットココアにミルクチョコレートではお互いの甘さが相殺されるだけである。お好み焼きをおかずにたこ焼きをごはんに食べる人は(たぶん)いない。同じような味や素材や調理をしたとしても、根本では等価にはなりえないのである。よしんば見た目が違うだけで風味も匂いも同じものが出来上がったとしても、今度はその意味が問われることになる。
それならまったく同じものでいいんじゃないの、と。
お互いの良さを引き出すこと、人工物であることを前提とした上で、自然を大切に思い、周囲の環境ゆえにその建築の形があること。それが調和というものだろう。
この建築が、それを達成していると諸手を上げて賞賛するつもりはない。それでも、この建築の潔さや、人工物らしさはとても気持ちがいいように思うのだが、いかがだろうか。






あー、相変わらず最後の最後に評価を覆すような毎度の補足ですが、今回ももちろん否定的な細ぉーい目で眺めた場所も数多いです。
というか、そんな場所だらけな気もします。



最終的に辿り着く、つまりはメインとも言える屋上もちょっと・・・


展示空間として、本当に建築家の仕業なのかと疑いたくなりますし、何にお金を使ったのかわかりませんが全体的にいろんな意味でチープです。
(一人の募金活動によってこの建築が建てられているので予算的には仕方ないですが。)
致命的なのは、敷地を無意味にコンクリートで舗装しているところ。もともとのコンセプトは、山の上に上がる道が建築の動線として連続しているところのようですが、それでも最終的には山の上に、木々の上に建築が突き刺さって浮いている、そんなイメージでなければ、なんのために床全体が傾いてまでこのカタチにしたのか、よくわからなくなる気がします。


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.2007.05.04
COMMENT

建築的に古い建築物ですね。
作者は誰なのでしょうか?
調和と言う面では、建築物を建てる上ではどうしても考えますが
同時に建物自体の特性は外部からの遮断ですものね。
でも、この記念館を見るならば
すごく晴れた日に見たいなぁと思いました。
圧倒的な人工物と、海と空の自然を同時に感じることができそうです。

mine  2007.05.04

91年バブル崩壊と
ワークステーションの初期作という背景からも
大変な苦労の中で設計に取り組んでいたんでしょうね。
若干篠原色も感じられなくも無い気が・・・

そして今、これは建たないだろうなぁと
時代を感じます。

実際見てみないとなんとも言えませんね。

oj  2007.05.04

こんにちは!
文章に設計者を載せるのを忘れていました。
この建物は、ワークステーションを主宰している高橋晶子氏の処女作です。篠原一男氏の事務所に勤めている時に彼女個人がコンペ勝ち取った作品でした。
時期や時代を考えてみれば、作者の意気込みが伝わってくる作品であることも当然かもしれません。(よくも悪くも、ですが・・・。)

現在であれば、構造的にももっとスマートな解法があるのでしょうが、これはこれで、なんだか迫力のある作品ですよね。

zubora  2007.05.09

はじめまして、突然のコメント失礼いたします。

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日本ブログ新聞  2007.06.12


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