【道後温泉本館】(1893)

明治27(1893)年ほどに、老朽化していた建物を改築してできあがったのが、この道後温泉本館だ。

道後温泉の歴史は、3000年などとも言われているが、松山市で公式に出された年表にも、聖徳太子をはじめ、多くの歴史上の人物が関係しているのを見ることができる。
同建築は、宮崎駿監督のよる映画、「千と千尋の神隠し」に描かれている「油屋」のモデルのひとつにもなっているようだ。
この建築を歴史に裏付けされた佇まいや意匠でみて感心することも当然できるのだが、私はこの建物の使われ方と、外部との関係性に何よりも感心させられた。



敷地めいっぱいを使って建てられた建築は、そのために目の前の道路を建物の一部であるかのように利用される。
さらに道路に記されている横断歩道のラインが違和感なくここの風景を構成していて、それは違和感よりもむしろ、大きく開けられた出入り口とともに一体的な空間を作り出す要素であるように感じるのである。
もちろん車にとってこれほど迷惑なことはないのだが、様々な事物が一体となった場の雰囲気はなんともおもしろく、そして心地よいものだった。



風呂をあがると二階と三階の広間で涼しむことができる。
そこはすだれによって内部と外部を緩く分けた、心地よい空間だ。
周囲の建物が放つ光や、街の音や風、空など、街のもつ雰囲気が、畳の上にまで運び込まれているのがわかる。
開口部が大きくとられているわけでもなく、視線の抜けるわけでもなく、テラスになっているわけでもない、ごく当たり前の開口部でありながら、こんなに外部との関係が心地よい空間はあまりないと思う。


建築のハードとソフトがうまく融合された100年前の建物は、現在であっても希有な存在であろう。





ちょうどやってた、松山まつり 野球拳おどり




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.2007.05.01
COMMENT

面白いですね。
道路に面しているのでなおさらそういう空間になってしまったのでしょうね。建物を近く感じることと言うのはなかなかないかもしれないですよ!
100年前と道路事情も、交通事情も変わってしまったとは言え
大事な空間ですね。
自然と人を迎え入れる空間になっているのがすごいです。

mine  2007.05.02

こんにちは!
つたない文章と写真でおもしろさを理解して頂けて素直に嬉しいです。
道路事情も、交通事情も変化しても尚、その場を構成する大事な要素であり続けることは本当に凄いことですよね。
温泉街の旅館の一角、というような風情が失われつつある道後温泉という街で、今だ庶民の銭湯を貫き、欠かせないシンボル性と、現代においても違和感を感じないその佇まいには、学ぶべきことがあるように思います。

zubora  2007.05.04

久しぶり!
最近道後温泉に行ったもので書き込みました。

あの2階の外とのつながりは秀逸だよね。
周辺の街との距離感が面白い。
温泉って言うのも、あの簾ごしに見る街も非日常で
とてもいい時間を過ごせました。

あそこだけ、古い建物が周りから取り残されているから生まれる、ズレが非日常性を生み出しているのか

狙ってできるものじゃないね

yoshi  2007.09.22


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